ケガの功名
 7月22日に横浜BCで開催された「横浜市長杯」のメインイベントは、なんと表彰式も終わった後に起こりました。プレイ終了後に優勝ペアが発表されてカップと副賞も渡されて表彰式も「無事」とりおこなわれて、参加者も三々五々に帰途につき始めたころ、なんとスコアミスが発覚したのです。優勝ペア、準優勝ペアを含めて上位4ペアの順位がすべて入れ替わることになり、棚ぼたでDavid Turnerさんと私が優勝ペアとなりました。
 もともとSilver Collectorの私にとっては、大勢の参加者の前で紹介されずにすんだことの方がありがたかったのですが…。ほんとうは、最後の最後のボードで大失敗したために優勝を逃したと思っていたので、久しぶりにうれしい優勝でした。

 年をとったせいか、プレイしたボードやオークション経過をほとんど覚えていない私ですが、ひとつだけ印象に残ったボードがありましたのでご紹介しましょう。 2セッション目の12番ボードです。私がW、パートナーのDavidがEに座っています。

Board:	12
Dealer:	W
VUL:	N-S
                 
	:A9         ┃    NN   ┃ 
	:AKJ103   ┃W       E┃ 
	:876    ┃W       E┃
	:1087    ┃    SS   ┃
ディーラーの私が1でオープンしたところ、NはPass、パートナーのEは2とレスポンスしました。「リビッドは、2、2NT、3のどれがよいか」と考えようとしたら、SがDblをかけてきました。 ここまでのオークションは、以下のとおりです。

(私)  (David)
 W  N  E  S
 1  P  2  Dbl

 さて、私のリビッドの選択肢は、前述の2、2NT、3にPassとRedblが加わりました。どれが正解かは難しいところですが、私のスタイルは「レイズできるときは、なるべく早めにレイズする」というものですので、ノータイムで「3」を選びました。SのDblがはいらなければ、おそらく2か2NTを選んでいたように思いますが、NSにスペードやダイアモンドのフィットが示唆された以上、ここで3をビッドしておかないと最後までクラブのサポートを示せない可能性があります。
 あえて私の好みで、上記の5つの選択肢を採点するならば、次のようになりましょうか。

:7点、 2NT:3点、 3:10点、 Pass:3点、 Redbl:1点

 意味不明なRedblが最低なのは当然ですが、多くのプレイヤが選びがちなPassも、私にいわせればこのハンドでは最悪に近いジャッジです。Passしてしまうと、Nはフォースされているとはいえ、自分たちのフィットを主張することになるでしょうが、おそらくNがビッドしたスートがNSにとってよいコントラクトやオープニングリードを示唆する可能性が高いでしょう。
は「1087」のサポートでは不安という方もいるかもしれませんが、パートナーのクラブがどのようなホールディングでも、パートナーがリビッドに窮することは考えられません。「競りあいでは、まずレイズ」、これがオークションの秘訣です。

 さらにオークションが続きます。私の3レイズの後、NはふたたびPassして、パートナーのEは3をリビッドしました。オークションを再掲すると、右のとおりですが、再び私にとって判断の分岐点がやってきました。
 (私)  (David)
  W  N  E  S
  1  P  2  Dbl
  3  P  3  P

 パートナーの3は、3NTへのトライかもしれませんし、クラブフィットにもとづくスラムトライ(=キュービッド)かもしれません。私のリビッドは、そのいずれにも対応している必要があります。ビッドの選択肢は、3、3、3NT、4といったところでしょうか。  私のチョイスは、「3」でした。これならば、「スペードには何か持っているが、3NTをリビッドするハンドではない」という意味が伝わるだろうと考えてのことです。再度、私の採点を示すならば、以下のようになりましょう。

:7点、 3:10点、 3NT:5点、 4:3点

ところが、3のビディングカードをテーブルに置いた私は、次の瞬間絶句しました。なんと私はオークション経過を勘違いしていたのです。Sは、パートナーの3リビッドに2度目のDblをかけていたのでした。つまり、正しいオークションは、右のとおりだったのです。これは、話が違います。
 (私)  (David)
  W  N  E  S
  1  P  2  Dbl
  3  P  3  Dbl!

 Sが3にDblをかけたとなると、実際には私のビッドの選択肢には、PassとRedblが加わっていたことになります。実際のオークションの場合には、私はどのビッドを選ぶべきだったのでしょうか。選択肢にPassが加わるとなると、私の判断も大きくPassに振れざるをえません。しょせんミニマムハンドであることとクラブのサポートの内容を考慮すると、さすがの私でも大いに迷います。冷静に考えてみると、以下の評価が正しいように思います。

:5点、3:7点、3NT:3点、4:3点、Pass:10点、Redbl:1点


 ビディング経過を見誤ったために、私は3をビッドすることになり、その後パートナーはスラムに向かって一直線でした。RKCブラックウッドの4NTに対して、私もさすがに今さらウソをつくわけにもゆかず5で2キーカード(Qなし)を示して、最終コントラクトはあっという間に6です。
 オープニングリードのKがプレイされた後、私はパートナーに申しわけない気持ちでダミーを広げました。
 (私)  (David)
  W  N  E  S
  1  P  2  Dbl
  3  P  3  Dbl!
  3  P  4NT  P
  5  P  6  P
  P  P
 フルハンドは、右図のようになっていました。オープニングリードのKを取った後、2巡でトランプを集めて、A、Kのもとにハンドのダイアモンドをディスカード。かんたんに12トリックとなります。EWで合計24HCPのすばらしい6でした。  もし、私がオークションを見誤らずに、3でなくPassを選んでいたとすれば、スペードのコントロールが不安なパートナーはおそらく6を目指す勇気が湧かなかったでしょう。まさに、私の不注意が呼んだ「ケガの功名」。優勝するときは、こういう僥倖も必要だという典型のようなハンドでした。
   Board:  12   :8753
   Dealer:  W   :Q76542
   VUL:  N-S   :102
           :4
    :A9    *NN*  :642
    :AKJ103  W  E  :8
    :876    W  E  :A4
    :1087   *SS*  :AKJ9653
           :KQJ10
           :9
          :KQJ953
          :Q2

 もっとも、私自身は3こそウィニング・ショットだったとパートナーに主張しています。


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