続・横浜市長杯から
 8月14日に開催された横浜市長杯に阿部弘也さんと出場して、4年ぶりに優勝することができました。阿部さんも私も今年5月に行われた横浜インビテーショナルに優勝しての招待出場でしたので、今年は横浜の2大リジョナルを制覇できて幸運でした。

 マッチポイント・ペア戦を苦手としている私ですが、今回の勝因をあえて分析すれば、

(1) 常にトップスコアを取ろうと欲ばらないこと。むしろ、なるべく60%から70%のスコアをめざし、おかしな選択でボトムスコアを取らないように心がけたこと。

(2) 自分がダミープレイに自信がなくても、ダミープレイの上手なパートナーに気持ちよくプレイしてもらえれば何とかなると気軽に考えたこと。

といえましょう。

 それでは、阿部さんのみごとなオークションとプレイをいくつかご紹介します。

<第1セッション>
18番ボード
ディーラー E
N−S バル

   N 
 S54 
 H75 
 DQJ1094 
 C10865 
  W   E
SAQ632 SKJ7
HJ832 HAQ4
DA72 DK863
C CQ72
   S 
 S1098 
 HK1096 
 D 
 CAK943 

 
 阿部 山田
 1NTpassC 
passDpassHH:Smolen(5枚Sと4枚HのFG)のつもり
passSpassS 
passpasspass  

阿部さんとSmolenについての明確な約束がなかったため、私はStaymanを経由して3Hを選択。阿部さんによればこれは5−5メジャーのインビテーションのハンドということでしたので、パスせずに3Sでつないでもらえたのは幸運でした。

Southはオープニングリードに当然のCAの後、S10にシフトしました。E−Wには27HCPもあるのですが、Sで5トリック、Hで2トリック、Dで2トリックの9トリックしか見えません。Hが3−3かHKがNorthにダブルトン、あるいはDが3−3のチャンスをすべて試したいところです。

阿部さんはトランプを3巡集めながら最後にダミーにはいります。3巡目のトランプにNorthはDQをディスカード。ここでダミーからHを出してHQでフィネスしますが、SouthのHKに取られてDが返ってきます。

  W   E
SQ6 S 
HJ83 HA4
DA72 DK863
C  CQ7

残り8トリックで7勝したいのですが、阿部さんはダミーからD2をプレイしてNorthのD9をあっさりダックします。NorthはCにシフトしますが、これをダミーでラフ。そして、DK、DAの順でキャッシュすると、残り4トリックは以下のとおり。

   N 
 S  
 H7  
 D 
 C108 
  W   E
S S 
HJ83 HA4
D  D
C  C
   S 
 S  
 H1096 
 D  
 C 

ここでダミーの最後のSQをプレイしてNorthがDJをディスカードしない限りハンドからはD8をディスカードすると、SouthはHCを両方守れずどちらかを諦めることになって、E−Wに10トリック目が献上されます。

この場合は、最後にSouthがHCのスクイズにかかってしまいましたが、もしNorthがHを守っていたとしてもDHを両方守ることはできません。つまり、阿部さんのプレイにより、N−SはCDHの3スートについてダブル・スクイズにかかっていたのです。

Sの4メイクは33/47で、70%のスコアを獲得しました。

<第2セッション>
16番ボード
ディーラー W
E−W バル

   N 
 SAK75 
 HA64 
 DJ6 
 CK972 
  W   E
S632 SJ10
HQ5 HKJ10972
DQ754 DAK10
CQJ106 CA3
   S 
 SQ864 
 H83 
 D9832 
 C854 

 
阿部 山田 
  passpass 
1NTCpassDC:何かの1スーター
passHpasspass 
S!passpasspass 

Eastのハンドは、Hの1スーターを示すかペナルティDblかの選択です(私はDblを選びます)。2Hで流れてきて、たいていのNorthはパスするでしょうが、阿部さんはファイト満々で2S、これが最終コントラクトになってしまいました。

実はE−Wには4Hまであるのですが、さすがにE−Wで4Hに到達したペアは1ペアだけ。それでも、このボードのアベレージスコアは、E−Wが2Hで4メイクの170ですので、ノンバルのN−Sが2Sを3ダウン以内におさめればよいスコアとなります。阿部さんのダウン覚悟の2Sは、バルネラビリティを考慮すれば、マッチポイントでは的を射た選択といえましょう。

すでにオークションでよい結果を得てはいるものの、プレイに関しても興味深い点がありました。Eastのオープニングリードは、トランプのSJ。トランプが3−2ブレイクなら、N−Sはトランプで5トリックとHAで6トリック見えますが問題はCの触り方。

阿部さんは途中でダミーからCを引いてハンドからKをプレイして一見Cの位置を外したように見えましたが、実はこれが正しいプレイなのです。CAがEastにあるのならばE−WはHで10トリックは取れそうなので170以上のスコアですが、CAがWestにあるのならばE−Wには9トリックしか取れないかもしれません。つまり、E−Wに10トリックあるならば2Sが1ダウンだろうが2ダウンだろうがどうせよいスコアなのでかまいませんが、E−Wに9トリックしかない場合にはE−Wでマイナススコアを取っているペアがいるかもしれないのです。したがって、阿部さんはCAがWestにある場合に備えたプレイを選ぶのが正解なのです。

Sはおとなしく1ダウンで−50。 45.5/47のほぼトップスコアでした。

20番ボード
ディーラー W
ボスバル

   N 
 S52 
 HAQJ105 
 D987 
 CJ73 
  W   E
SKJ104 SA873
H8732 H
DAQ3 DKJ1065
C86 C954
   S 
 SQ96 
 HK94 
 D42 
 CAKQ102 

 阿部 山田
   pass
passpassCDbl
HSDblpass
HSpasspass
H??  

これはマッチポイントらしい競りあいのボード。Westの私が「少しはオークションに参加するか」とSouthの1CにテイクアウトDblをかけると、意外な展開になりました。

NorthはSouthのサポートDblを聞いて、3Hまで競ってきました。ふつうはこのあたりで売り渡すことになるのですが、Eastの阿部さんは...

 阿部 山田
   pass
passpassCDbl
HSDblpass
HSpasspass
HS!passpass
H!!passpasspass

何とEastが3Sまで競って、さすがにDblがかかるかと思いきや、Northは4H。全員降参。いくらマッチポイントとはいえ、あまり見たことがないオークション。理論的に考えれば、少なくとも3H以下で終わっているオークションを4Hまで押し上げたのですから、4Hがメイクすればどうせボトムに近いと思えば私が4HにDblをかけるべきなのかもしれません。

HS2トリックとD2トリックを取ってかんたんに1ダウン。実はE−Wに4Sまであるのですが、さすがに4Sをビッドしたペアはひとつもありませんでした。しかし、N−Sを4Hにまで押し上げて得た100というプラススコアの効果は絶大で、36/47を獲得。大半のN−Sは3H以下のパーシャルでプレイしてプラススコアでした。

阿部さんは「山田君のDblのおかげで3Sまで確信を持って競り合えた」と、たまには私が役に立っていることがわかり安心しました。

(山田 和彦)


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